幼い頃から透過性のあるものに惹かれていた。

その一つに窓がある。

窓から外を眺めるのが好きだった。

窓の向こう側にも同じ現実世界が存在し自分の目にも見えている。

常識では分かっているのに窓という透明なフィルターを通すことで

目の前の世界が現実ではない手の届かない場所のような不思議な感覚があった。

 

そんなある日、ガラスで作られた小さなブタの置物に出会った。

光を内包した透明なガラスのかたまり。

あっ。

その中にもあの時と同じ世界が広がっているのを感じた。

見えているのにふれられない

どこか現実世界とは離れた空間（架空の空想世界）に繋がっている気がする。

まだ小学生だった僕は心を奪われ、ずっと眺めていた。
 

私にとってガラスのかたまりの中には魅惑的な世界が広がっている。

透明なガラスはすぐそこにあるその特別な世界を包み込み、現実世界とを隔てる膜、フィルター、境界、窓のような役割を果たしている。

モチーフにする形は、その世界と現実世界を行き来するときの切符、パートナー、守護神のようなもの。

近くにあるとなぜか落ち着く、心が休まる存在。

人それぞれ形があると思う。

私にとってそれは具象的な動植物が中心だった。

ただ色は抽象的に見えることもあり

たぶんそれは世界を繋ぎやすくする余白のようなものだと思う。

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透明なガラスは儚い、繊細、曖昧、不安定といった思いを想起させるが、建築物の一部として使用されるほど強く、安定な素材である。

その一見相反する性質が故に自分の中にある表現できない大切な想いや記憶といった曖昧なものを包みこむのにガラスが適していたのかもしれない。

かつて小さなブタの置物が私にとって拠り所となったように、私の作品が誰かにとってのそんなかけがえのないものになれば嬉しい。